平成31年1月30日(水)13時30分から、京都自動車会館(京都市伏見区)において「過労死等防止対策・健康起因事故防止対策セミナー」を開催しました。当日はメーカー3社のご協力により血圧計関連ブースが出展され、高機能血圧計を使用し、血圧の正しい測定方法・適正な数値等について説明を受けていただきました。
受講された59名の経営者及び管理者の方々は熱心に聴講され、受講後にはGマーク申請の加点対象となる修了証が交付されました。
◇第一部「過労死の実態について」
講 師:酒井雅彦 氏(陸上貨物運送事業労働災害防止協会 安全管理士)
内 容:労働災害とは、業務に起因して労働者が負傷・疾病・死亡することであり、過労死発症のメカニズムとして
は、業務が引き金となり持病を増悪させ発症されるケースが多い。平成29年度の道路貨物運送業における
脳・心臓疾患に起因する過労死の労災補償に関する認定件数は、全産業の33.6%を占め全業種の中で最
も多くなっている。事業者には、使用者に対する安全配慮義務があり、労働者の身体・生命・健康に生ずる
危険から保護する義務がある。
[過労死予防のポイント]
○労働時間対策 ①時間外・休日労働時間の削減
②年次有給休暇の適正な取得・推進
○健康管理対策 ①健康管理体制の整備・安全衛生推進者、衛生管理者の選任
②健康診断の実施
③医師による面接指導
※時間外・休日労働が1月当たり100時間を超える運転者から申し出があった場合、事業
者は医師による面接指導を実施しなければならない。
(安衛法第66条の8・安衛則第52条の2,3)
◇第二部「過労死等防止計画について」
講 師:大西政弘 氏(公益社団法人 全日本トラック協会 交通・環境部付部長)
内 容:トラックが第1当事者となる死亡事故件数は減少傾向であるが、健康に起因する事故は増加傾向となってお
り、ドライバーの健康管理対策が急務であるため、過労死防止計画を推進されたい。また、平成30年度か
ら全日本トラック協会では、過労死や健康起因事故につながる脳・心臓疾患発症の要因となる高血圧の予防
には血圧の数値の把握が重要であることから、血圧計の普及を図り、乗務前点呼における血圧測定に活用で
きる高機能な血圧計の導入助成事業を実施している。
[過労死防止計画]
○計画目標
期間:5年間(2018年度~2022年度)
数値:脳・心臓疾患による過労死等の発症を20%削減
基準:直近5年間(2012年度~2016年度)の実績の平均値
※労災請求件数:平均130件、労災支給決定件数:平均83件
○対策8項目
1.時間外労働(残業)時間の段階的削除
(100時間超:即時、80時間超:5年後、60時間:目標)
2.所定の休日の配置と計画的な運用
(週1回:即時、完全週休2日:5年後に過半数を目指す)
3.睡眠時間の確保と規則的な運行
(インターバル11時間:5年後に過半数を目指す)
4.点呼におけるドライバーの疲労・健康管理の強化
(点呼時の健康管理の仕組みの導入)
5.定期健康診断の完全実施とフォローアップ
(受診率、フォローアップ体制、有所見率)
6.「死の三重奏・四重奏」を持つハイリスクドライバーへの保健指導・生活習慣改善支援
7.労務・運行管理や疲労・健康管理の継続的な仕組みづくり
8.過労死等と健康起因事故の両面からの防止対策の推進
○緊急対策
・受診率の向上と健康診断結果のフォローアップ→ハイリスク者の発見
・ハイリスク者を対象に運行管理面での就労措置の配慮(残業の上限、規則的な運行)
=点呼の充実:血圧測定、睡眠時間、セルフケアチェックシート等→就労可否の判断
◇第三部「ドライバーの健康管理」
講 師:坂田晃一 氏(京都産業保健総合支援センター 産業保健相談員)
内 容:健康起因事故と過労起因事故が多発する背景には、運転者の高齢化・厳しい勤務環境・不十分な健
康管理等が要因となっており、長時間勤務による脳・心臓疾患、精神障害等、健康に与える影響は
大きい。健康起因事故の予防策としては、労働時間管理・健康管理を徹底しドライバーの負荷軽減
を図り、ハイリスク・ストラテジー(脳・心臓疾患/SAS症候群/過労対策)を管理する体制を作
り上げることが必要となる。